不動産相続の流れ

1. 相続発生

相続税の申告期限は10か月あるため、後回しにしてしまいがちですが、手続きを遅らせると様々な問題が発生したり、財産価値が損なわれる可能性があります。

遺言がないまま相続発生すると

相続手続きには、複数の書類に相続人全員の署名、実印の押印、そして印鑑証明書が必要となりますが、それらがすべて揃うまでは手続きを進めることができません

不動産は、遺産分割協議が終了するまで、法定相続人全員の共有財産となるため、全ての相続人の合意がなければ、住み続けたり賃貸に出したり、また売却などの利用ができません。

預貯金は、各金融機関に所定の書類を提出しない限り、入出金や解約ができなくなります。また、借入金や公共料金、税金、クレジットカードの自動引き落としも停止されます。さらに、被相続人の準確定申告や相続税の納税資金についても、凍結された口座からの出金は不可能になります。

賃貸収入については、銀行口座が凍結されるため、賃借人からの賃料振込が基本的に停止されます。別の口座に入金することは可能ですが、凍結された口座からは出金できないため、遺産口座を利用した借入返済や固定資産税、修繕費の支払いが滞る可能性があります。また、賃借人に対して「振込口座変更」の通知を行う際は、遺産分割協議が完了するまで、全相続人の同意を得ることが必要です。

株式や投資信託の相続では、相続手続きをゆっくり進めていたり、遺産の調査や確定、遺産目録の作成、遺産分割の話し合いや名義変更などに時間をかけている間に、市場価値が下がってしまっても、不満を言うことはできません。

2. 遺言書有無の確認
事前に遺言の有無を確認できていない時

被相続人の遺言書の有無によって、その後の手続きが大きく変わります。
下記のような場所を調査することで発見する場合があります。

引き出し
金庫

ご自宅の収納

金庫の中

公正証書遺言

※ 公正証書検索システムは日本公証人連合会が管理しており、全国の公証役場においてこのシステムで遺言公正証書の有無および保管公証役場を検索することができます。

遺言書を見つけた場合の注意点

家庭裁判所で「検認」手続きをする必要があります。

公正証書遺言は、公証役場のシステムを使って検索することができます。遺言書を裁判所に提出せずに勝手に開封してしまうと、法律に違反し、5万円以下の過料が課される場合があります。もし誤って開封してしまった場合でも、相続人の資格が失われることはありません。ただし、遺言書を意図的に隠したり、破棄したり、改ざんしようとした場合には、相続の権利を失う可能性があります。

自分で遺言書の「検認」手続きをする場合

  • 検認申立書の作成
  • 裁判所へ提出する戸籍謄本などの書類を集める
  • 裁判所へ行く期日の調整
  • 遺言書がどこにあったなどの説明を裁判官にする

などが必要になります。

3. 法定相続人の調査・確定
遺言書がある場合

遺言の内容に沿って相続の手続きを進めます。

遺言書がない場合

相続人を確定するために親族関係を調査します。
(被相続人の戸籍謄本や除籍謄本を取得)

相続人に未成年者や重度の認知症の方がいる場合は、家庭裁判所で別途の手続きが必要です。

・生前中の「相続放棄する」旨の同意や書類は無効です。
『放棄』は相続を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所での
手続きが必要です。

相続税の基礎控除額


基礎控除額の金額の求め方

基礎控除額 = 3,000万円 + (法定相続人 × 600万円)

相続税の対象財産

原則、被相続人の全ての財産が対象
プラスの財産  預貯金、不動産、株式などの有価証券、貴金属 など
マイナスの財産  住宅ローン、カードローンなどの借金、未払いの税金など

相続税の対象とならない財産

相続人のもらった生命保険の合計額のうち、法定相続人一人当たり500万円までの額
相続人のもらった退職手当金等の合計額のうち、法定相続人一人当たり500万円までの金額
墓所、仏壇、祭具、国等に寄付した財産等
4. 相続財産の調査・確定
相続財産がいくらなのかを調べます

相続財産の合計額が基礎控除額を超えていないかどうかを確認するためにも、
相続不動産の評価額を知る必要があります。

預金や預貯金 ・・・ 金額そのまま
不動産 ・土地(相続税路線価を用いる) ・建物(固定資産税評価額を用いる) ・収益物件(借家権割合による評価減あり)
住宅ローンの負債など ・・・ マイナスの現金扱い
預金や預貯金 ・・・ 原則、被相続人の他界した日の評価額
5. 遺産分割協議

相続人全員で遺産の分配方法を決めるための話し合いを指します。
また、その話し合いで決定した内容を文書にまとめたものが、遺産分割協議書と呼ばれます。

全員必ず揃わないといけない?

【遺産分割協議書】には、相続人全員の署名と押印があれば、
必ずしも全員が一同に集まって決定する必要はありません。

土地や建物は分割する方法は?

土地や不動産が相続財産に含まれている場合、一般的な遺産分割方法は4つあります。

1. 現物分割

不動産をそのまま分割する方法です。

・文筆登記
 土地を「ここからここまで」と区切って分ける方法です。
・その他
 例として、妻が土地を取得し、長男が借地権を得る形(妻が借地権を設定する)などが挙げられます。

2. 代償分割


一人の相続人が不動産を取得し、他の相続人にはその持分に応じた金額を支払って調整する方法です。

3. 換価分割


不動産の全体または一部を売却し、現金化して相続人で分ける方法です。

3. 共有分割


相続人が不動産を分割せず、それぞれの相続分に応じて共有する方法です。

6. 遺言書有無の確認
一連の流れを経て整ったら相続不動産の相続登記を行います

相続登記はご自身で手続きを行うことも可能ですが、
通常は司法書士などの専門家に依頼することが一般的です。